本堂前 |
大塔婆 |
本年は、中尊寺を開山された慈覚大師円仁の1150年御遠忌であり、
また約890年前の今日は、中尊寺落慶供養が行われた記念すべき日にあたります。
御詠歌の中、天台座主御名代である京都山科の毘沙門堂門跡門主 叡南覺範猊下を
はじめ、僧侶の方々が厳かに入堂されました。
美しい声明が堂内に響き渡る中、それに呼応するかのように燭台の上の炎が赤々と
燃え上がります。祈りと共に、まさに御本尊の中に魂が宿っていく、その時を見ているようでした。
藤原清衡公により読み上げられた「中尊寺建立供養願文」の冒頭に
「奉安置丈六皆金色釈迦三尊各一躰」
(安置し奉る 丈六皆金色の釈迦三尊像各一体)
と出てきます。
時代と共に堂塔が衰退する中
もともとの御本尊である釈迦如来像は、災禍により多くと共に失われました。
「御本尊のいない堂で祈祷を行っている」という窮状を訴えた、という鎌倉時代の記録も残ります。
明治42年の本堂再建の際、
御本尊としてに迎えられたのが同寺の光勝院(閼伽堂)から移された阿弥陀如来像、
中尊寺本堂の前・御本尊です。
大火を逃れた数少ない平安時代の貴重な仏像ではあったものの、
本来の御本尊である釈迦如来ではなかったのですね。
法要が終わり、この度新しく釈迦如来を本堂の御本尊に迎える事は
中尊寺一山の宿願であった、と山田貫首が謝辞の中でおっしゃっていました。
何だか私まで感無量なのであります・・・・
この新御本尊の造立管理にあたられた吉田源之丞さん、仏師坪田最有さん、
漆を提供された岩手県浄法寺漆生産組合の組合長である工藤竹夫さんへ
それぞれ感謝状が送られました。他にもたくさん、いろいろな形でご尽力された方がいらっしゃる事と思います。
ありがとうございます・・・
これからおそらく何百年にわたって永く、新しい御本尊様はここで皆様をお迎えするのでしょう。
東日本大震災があったり、世界遺産登録があったり・・・
激動の中で生まれた御本尊様は力強く、そして優しい眼差しでもありました。
境内はまだ寒さが残るものの、強く暖かい日差しが確実に近づく春を感じさせてくれました。
間もなく美しい桜に彩られる事でしょう。
是非新しい御本尊様とご縁を結びに来てくださいね。